21世紀の恋人たちへ


水、光、風、そして蓮の花。日本を代表するエシカルジュエリーの旗手、HASUNA代表の白木夏子さんに
HASUNAのフィロソフィーのエッセンスである自然、愛、そして死生観など
ビジネスをたおやかに包む白木夏子さんの思いと、カップルに伝えたいメッセージについてお話を伺った。


『蓮』

ジュエリーブランドHASUNAは、蓮の花からこのブランドネームを作りました。
蓮は皆様もご存知の通り美しい花で、私自身も昔から大好きな花です。
私が住んでいたインドやベトナム、訪れたカンボジアでも、
様々なアジアの国々で蓮は貴重な花として愛でられています。
特に仏教、ヒンドゥー教の世界の中で蓮は神様の座る台座であったり、宗教画に描かれたり、とても神聖な花です。
蓮の意味を調べて、改めてその尊さに気づかされました。
清らかで美しい力の象徴、浄化の象徴とも言われています。
そう扱われる理由には、花自体の美しさはもとより、
泥の中から天に向かって真っ直ぐに花を咲かせている姿にあります。
その姿がまるで泥を浄化しながら美しい花を咲かせているかのようで、
清らかで美しい力の象徴だとも言われているのですね。
これを想い浮かべた時に、私も美しいジュエリーを作りたいと思いました。
私にとって美しいジュエリーとは、世界中のジュエリーに関わる問題を解決、
つまり浄化しながら纏う人も美しくできる、
そんなジュエリーなのだと思っています。

そのような想いがあり、蓮の花とジュエリーを重ね合わせ、ブランドネームをHASUNAと名付けました。


『水』

幼い頃から水は特に気になる存在でした。
幼い頃、釣りが趣味の父親の隣で、
透明度の高い川の深くなった淀みの中を一日中眺めている・・・という強烈な記憶があります。
決して楽しい気分ではなく、どちらかというと恐怖に近い。
苔の生えた岩の上に乗り、川魚が好みそうな急流の音を聴きながら、
深くて底が見えない淀みの中の生き物を想像していると、
いつか私はその中に溶け込んで、大きな魚や蛇に食べられて消えてなくなってしまうのではないか、という恐怖感に駆られていました。

でも、じっと見つめるのを止められない。それは、美しさを感じていたからだと思います。
光を受けて輝く水面と、限りなく透明に近い水。淀みの薄い青と苔むした岩。
全ての生命が水の中で生まれて、私に繋がっている祖先もそこで生まれた。
私たちは、水の中の故郷へ還る憧憬と、退化することの恐れを潜在意識の中にはらんでいるのだと思います。
少なくとも私にとって「水」とはそういう存在です。


『風』

自然の中にある生命—様々な生き物、生きているもの、命あるもの。
自然の事象などには幼い頃からすごく興味があって、ものすごく気になる世界というか・・・。
水の中の生態系や、樹木、自然の中に存在する全て。
光や音、吹き抜ける風も含めてその一つ一つがすごく愛おしい存在だなと小さい頃から思っていました。

今でも頻繁に自然の中に身を置くようにしています。インスピレーションを得るためです。
自然の中では、すべての五感を使う。
何にもしないけれども、自分の感覚、感性が時間の経過と共に研ぎすまされてゆくのが分かります。
風が吹いてくると「ああ、気持ちいいな」と思える。
風は見えないものですから、自分の肌の感覚や音でしか感じることができないものですよね。
それで、この風ってどこから吹いて来たのかなと。
生暖かい風だったら、ああ南から吹いて来たのかなとか、冷たい風だったら北から吹いて来た風なのかなとか。
目には見えなくても、それを身体で受け止めて感じること。
私はそれが、人間にとって、とてもピュアで重要な感性なんじゃないかなと思っています。

たとえば、ブータンの人たちは「風」を大切にしていて、「風は宇宙の息」とも言われています。
彼らは大半が熱心な仏教徒で、風の通り道に仏教の経文が書いてある旗を立てたり、吊るしたりするんですね。
風が吹くと旗がはためいて、風に乗って祈りがご先祖様や大切な人たちに届くのだそうです。
目に見えない風をも尊重していることの現れなのだなと思います。
普段都会で生活していると、風がどこからどう吹いてるとか、嵐の時以外はほとんど意識しないですよね。
昔は、風によって天気が変わるとか、様々なことを感じていたとは思うのですが。
なので私は生物としての感性を思い出すためにも自然の中に出て、
目に見えない風を感じることがとても大切なことだと思っています。


『光』

光もすごく不思議な存在で、太陽から降り注ぐそのもの自体は見えないけれど、
他の物質・物体に光が当たって、私たちの目に見えるんですよね。
HASUNAのジュエリーで光をテーマにしたものがあるのですが、
森の中に入ると太陽から降り注ぐ光が木の葉に当たって、
木漏れ日になって地上に降り注ぎます。
その木漏れ日は、木があるからこそ見えるもので、木がなければ当然のことながら見えないものです。
木からこぼれる光の筋が、こうキラキラと輝いている様子、その光を象徴してデザインしました。

私が光を好きな理由は、それそのものは見えないけれども何かに当たってその存在が分かるところです。
まるで私たちの生き方を象徴しているかのようです。
人間も他者がいて初めて自分が分かる。
自分という姿は見えづらいけれども、周りにいる人たちによって、自分が見えるようになってくる。
光のことをそんな風に捉えています。



『命の尊さ〜美しい世界』

生と死の狭間。
私がよく足を運ぶ発展途上国と比較すると、日本は死はそんなに身近なものではないと感じます。
もちろん家族が亡くなったり友人を亡くした経験もあるのですけれど・・・
インドでは路上に死体が転がるスラムで過ごし、常に死と隣り合わせである経験をして、命の儚さと尊さを学びました。
現在、取引をしているルワンダでも、殆どすべての国民が自分の家族や親戚が殺された経験があると聞き、とても衝撃を受けました。

94年に始まった内紛では、全国民の1−2割が虐殺されたそうです。
現在では自分の家族や親戚を殺した人間が身近に住んでいるというような状態で・・・。
私たちの想像を絶するほど複雑な中で生きていることを目の当たりにしました。
このような経験をして、生と死は紙一重で、死は遠い先なのではなく、すぐ身近にあることを感じるようになりました。 死が身近にあることに気づかされると同時に、生きていることはすごく尊いことなのだとも思います。
そして、生きているのであれば、やっぱり私は何かしなければならないと思いました。
「生きている、生かされている」っていう、この与えられた命を使って、自分の使命を持って、
この世の中に還元していかないといけないな、と、そう考えています。

これは本当に私の個人的な意見ですけれども、
この世の中ってもう、いろんな事件とか事故とか嫌な出来事って見ればいくらでもありますよね。
私の仕事もやっぱり今、金の鉱山での搾取や児童労働を解消することだったり、環境破壊をなるべくしないようにと、
その負の出来事をなんとかしたくてこのビジネスをやっているので、負の側面を嫌という程見ることになります。

しかしその反面、実はこの世の中ってすごく愛に溢れているのだなということを、
自分が生きてきた中でもとても感じますし、
自分の仕事を通じても感じることができるんですね。
それは家族の中で生み出される愛情や、友達や身近な他人同士の隣人愛、
遠く離れたパキスタンだとかルワンダの人たちへの愛情でもあります。
どんな辺境の地に行っても、愛情に溢れた家族の姿を見ることができる。
この世界は愛に溢れていると、子どもたちには伝えてゆきたいと思っています。
多くのカップルの方にも、お子さんができたら、子どもたちには愛の溢れた世界を見せてあげてほしいですし、
愛情豊かな家庭をつくるというのが、夫婦としてのまず最初のステップではないかと思います。
ニュースでは毎日、負の出来事とか嫌な出来事とか沢山流れて来ますけれども、
でも世の中ってそうじゃなくて、実はすごく愛情豊かで美しい世界なんだよと、
私はもっともっと、世界に伝えていきたいと考えています。

白木夏子
HASUNA Co., Ltd. 代表取締役・チーフデザイナー
1981年鹿児島生まれ、愛知育ち。
2002年から英ロンドン大学キングスカレッジにて発展途上国の開発について学ぶ。
卒業後は国連人口基金ベトナム・ハノイ事務所とアジア開発銀行研究所にてインターンを経験し、
投資ファンド事業会社勤務を経て、2009年4月にHASUNA Co., Ltd.を設立。
人と社会、自然環境に配慮したエシカルジュエリーブランド事業を展開。

日経WOMAN「ウーマン・オブ・ザ・イヤー2011」キャリアクリエイト部門受賞。
2011年、世界経済フォーラム(ダボス会議)が選ぶ日本の若手リーダー30人に選出。
2011年、AERA「日本を立て直す100人」に選出。
2012年、ロシアAPEC日本代表団として「女性と経済フォーラム」に参加。
2013年.世界経済フォーラム年次総会に出席。